視線から解放されて絶景をふたり占め
食べ手が主役のアフタヌーンティー

ひと昔前ほど肩身の狭い思いはしなくなったものの、女性客で埋め尽くされたスイーツ店に入るのは気が引ける。本当はメニューを吟味し、これぞと思える一品を選びたいのに、周りの視線が気になって「本日のおすすめ」などを適当に指さしてしまうからだ。そんな難儀な悩みを抱えた私を見かねて、常にアンテナを張り巡らせていた彼女がある日、こんな誘いをかけてきた。「お台場のホテルに部屋でアフタヌーンティーが食べられる宿泊プランがあるんだって。それなら誰かの目を気にすることなく、甘い物が食べられるよ?」。その提案に乗った僕は、早速、予約を済ませ、その日を指折り数えた。
強すぎない初夏の光に包まれた部屋で寛いでいると、ふたつのアフタヌーンティーセットがワゴンで運ばれてきた。プレートやカトラリーに初夏の日差しがキラリと反射する。口中でとろける食感が楽しいピスタチオやオレンジのムース、新茶の季節に嬉しい抹茶のマカロン、口直しに生ハムメロンのピンチョスやほうれん草のスコーン……。ひとつひとつを夢中になって味わい、時に写真を撮った。
満足感に包まれながら読みかけの本を開き、ベッドでまどろみ、ふと窓の外を見ると、傾きかけた太陽が東京湾と西の空をオレンジ色に染め上げていた。先ほどまでの華やいだ気分はクールダウンし、今度は落ち着いたムードを求めている自分が居る。太陽の時間軸に、どれだけ人の気持ちが影響されるかを改めて知った格好だ。隣で小さなスケッチブックにペンを走らせていた彼女も同じ気持ちだったようだ。「少しこの辺を散歩してから、バーでも行く?」。もちろん異存はない。僕はまた、その提案に乗った。

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アフタヌーンティーセットと初夏の光が相まって、木目のテーブルに陰影を作り出す。温かなお茶と心尽くしのスイーツを食べながら、この絶景を大切な人といつまでも。

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心がざわつく日は甘い物に耽溺し、何するでなく部屋で寛ぐのはいかがでしょう? 開けた空が茜色に染まる様子を見ていたら、いつの間に肩に入っていた力も抜けるはず。